王様の耳は驢馬の耳

週一の更新で受け売りを書き散らしております。

「倫理学」を読んで その五

引き続き和辻哲郎の「倫理学」を取りあげる。

前回は信頼の根拠は人間存在の理法であり、信頼も人間関係も同時にこの理法の上に立つこと。そして人間存在の真相は二重の否定的構造においてのみ現されるもので、それが停滞すれば真実は起こらず虚偽が生じることを見てきた。この真理の実践的行為的を「真実」あるいは「まこと」と呼ぶが、では虚偽とはいかにして生じてくるのか。和辻の考察を見ていこう。

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「倫理学」を読んで その四

引き続き和辻哲郎の「倫理学」を取り上げていきたい。この本は岩波文庫が出版しているものだが、全四巻にも及ぶ大著であり、和辻の代表作でもあるためしばらくこの本と付き合うことになる。

ちなみにここからは「倫理学」の第二巻になる。哲学書であるため筆者の乏しい理解では、読み解くのに手間取って前に進まないからずいぶん時間がかかっている。

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「倫理学」を読んで その三

社会、世間、世の中などと呼ばれる間柄のなかにおいては孤立的独立的個々人は存在できず、個人は己を捨てることで共同性のうちに埋没することで己を拾うことができるという矛盾を見てきた。ならば間柄を形成する個々人をそうさせる「全体的なるもの」とは何であろうか。

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