王様の耳は驢馬の耳

週一の更新で受け売りを書き散らしております。

歴史

「インテリジェンス入門」を読んで その壱

ご承知だとは思うが、今回扱うインテリジェンスとは知能や知識のことを指すのではなく、諜報活動のことをいう。筆者はあまり技術的なことには関心が薄いのだが、たまたま手にとる機会があったのでここで紹介したい。 著者である柏原氏は本の冒頭で「情報機関…

「戦後思潮の超克」を読んで

国学四大人(しうし)と言えば荷田春満、賀茂真淵、本居宣長、平田篤胤の四人である。平田が入って契沖が入らないのはなぜかという議論はさておき、国学者と呼ばれる者は皆古典に深い造詣を持っている。古典を繙くことで古義を明らかにせしめ、日本民族の精神…

「日本の歴史をよみなおす」を読んで その弐

網野善彦氏の上梓された『日本の歴史をよみなおす』の紹介の二回目である。前回の終わりに少々厳しいことを書いたが、日本の慣習を知るにおいては量著であると思うので、今回もその続きである。前回と同様に概略を箇条書きにしていきたい。 bambawest.hatena…

「日本の歴史をよみなおす」を読んで その壱

著者、網野善彦氏の『日本の歴史をよみなおす』は、日本の歴史的風習を知る上でたいへん示唆に富む史料であると言える。今回はその内容の全てを取り上げることは煩に耐えないので、少々不丁寧であるが気になった箇所を箇条書きにまとめてみたい。 日本の歴史…

現代日本と町人根性 その弐

前回の記事で和辻哲郎氏の『続日本精神史研究』の中で論じられた「町人根性」に対しての鋭い批判を見てきた。現在の日本にも通じるものがあるので、今回もその続きとしたい。 和辻哲郎全集〈第4巻〉日本精神史研究,続日本精神史研究 (1962年) 作者: 和辻哲郎…

現代日本と町人根性 その壱

三回に渡って山本七平氏の『日本資本主義の精神』を取上げ、鈴木正三と梅田梅岩の二人を通して江戸時代の資本主義の精神を見てきた。今回はこれに痛烈なる批判を加えた和辻哲郎氏の『続日本精神史研究』を紹介したい。 和辻哲郎全集〈第4巻〉日本精神史研究,…

日本資本主義の精神を読んで その参

前回は梅田梅岩の思想の基礎となった、鈴木正三を見てきた。今回は江戸時代の中流サラリーマン、石田梅岩に焦点をあて、山本七平氏の著書を通してその精神構造の基本を本著を通して見ていきたい。 bambawest.hatenablog.com

日本資本主義の精神を読んで その弐

「日本資本主義の精神」の著者、山本七平氏は言う。江戸時代は日本の歴史の中で、最も興味深い時代であり、およそ二百五十年の治世のうちに「自前の秩序」を確立した。 本著のなかで最も強調されるのは石田梅岩であるが、彼の思想の基礎には鈴木正三がある。…

日本資本主義の精神を読んで その壱

「日本資本主義の精神」は昭和54年に刊行された。著者の山本七平は日本の資本主義の精神的原型を江戸時代のサラリーマンにあるとしている。故に江戸時代を知ることが現代を知ることになると述べる。本著では江戸時代サラリーマンの精神構造の形成に影響力…

イソップ寓話の教訓

蛙たちは民衆政治に飽きて毎日ゲコゲコ鳴くだけ。 そこで神様に王様を送ってくださるようお願いした。 ところが送られたのは一本の棒杭。 蛙たちは口もきかず動きもしない王様をやがては馬鹿にした。 動く王様を送ってくだされ。 そこで神様は鶴をお遣わしに…

日本の於ける理性の傳統を読んで その四

前回と前々回は「道理」と「自由」が鎌倉時代からの日本の精神史に影響の大なるを概略的に見てきた。この二つの思想が日本の近代の幕開けの標識語であるとする小堀桂一郎先生の主張であることは前回にも触れた。今回は「天道」について本著をもとに書いてみ…

日本の於ける理性の傳統を読んで その参

前回の記事で「自由」に触れたが、今回は少しこれに言及してみたい。前回からの繰り返しになるが自由は明治以降FreedomやLibertyの訳語であると言われているが、俗説に過ぎない。これはもともと仏教語で大陸から伝わり古くから日本にあり、日本書紀にも見ら…

日本に於ける理性の傳統を読んで その弐

前記事で道理が近代開始の標識後であると、小堀桂一郎先生が著書において述べられた。では道理とは如何に把握され、どこまで浸透していたのか。 bambawest.hatenablog.com

日本に於ける理性の傳統を読んで その壱

歴史の区分は幾つかに分けられるが、今日において通説となっているものは古代・中世・近世・近代・現代の五分法であろう。中世と言えば政情不安定で、戦乱や疫病が社会全体を覆い停滞が甚だしい時代とされ、暗黒時代とも呼ばれる。この歴史区分には諸説あり…

アメリカ外交の伝統的特徴

アメリカの外交の伝統的特徴は英国のネイティブアメリカンに対する植民事業をその基盤とする。後述するがそれは豪州やニュージーランドの侵略とも差異は有るが、何れにせよ英国人の狡猾なる残虐性がこれらの植民事業、否、侵略史から浮かび上がってくる。

軍人と政治家よりの教訓

日本は明治以来、政治と軍事を分離してきた。軍国主義批判が喧しい現代では正しい政治形態とされているが、果たしてそうであろうか。 我が国に於いては鎌倉時代から江戸時代末期までの凡そ七世紀、武士が政権を握って来たという伝統に反する失政であったと大…