王様の耳は驢馬の耳

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アメリカ外交の伝統的特徴

 アメリカの外交の伝統的特徴は英国のネイティブアメリカンに対する植民事業をその基盤とする。後述するがそれは豪州やニュージーランドの侵略とも差異は有るが、何れにせよ英国人の狡猾なる残虐性がこれらの植民事業、否、侵略史から浮かび上がってくる。

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 筆者は大航海時代(The Age of Discovery)に一つのロマンを感じる。未知の海へ漕ぎ出し嵐と壊血病に喘ぎつつも、果敢に荒れる波を蹴って新大陸を発見していく様には心躍らされる。スペイン、ポルトガルを嚆矢にオランダ、フランス、イギリス、ドイツと次々に危険を顧みず海へ乗り出して行く。西欧人の潑剌たる開拓精神の発露であり、彼等の真面目(しんめんもく)の発揮である。

 彼等を偉大たらしめるこの開拓精神に対する賞賛を惜しむものではないが、しかしこれはあくまでも彼等の輝く一側面に過ぎず、他面に於いては暗然たる影がこの時代に落としている。言うまでもなく西欧人の呵責なき残虐性である。

 さて、一々の彼等の「業績」を挙げていくのは流石に手間であるので、イギリス一国に的を絞る。なぜなら彼等こそが七つの海を制したと言われる大海洋国家であるからである。以下は英国のアメリカ侵略の特徴を箇条書きにしたものである。

  1.  「機会の平等」を理由に「平和的・協力的互恵関係」と言いながら近づく
  2. 自分がほしい物を、手続き(契約)を経て正当に略奪する
  3. 略奪に気づいた相手が怒って契約を破るのを待つ
  4. そして「正義の名の下に」攻撃

 これらはアメリカ大陸の植民事業から始まる、今でもよくお目にかかる特徴である。つまり伝統的方法と言い得る。彼らはこれをネイティブアメリカンの戦いの中に学んだのである。具体的に言えば装飾品や酒などで誘い、これらをくれてやると近づき、それから宴を催す。酒が大好きな原住民は気を良くして、訳も分からず英国人の出す契約書に署名する。その契約で以って原住民を追い出すが、怒った原住民が取り返そうとしてきた所を契約を盾に「正統」に攻撃し殲滅する。

 この方法が見事に当たったため、遂にアメリカは独立建国後もこの成功例を続けていくことになる。鎖国を続けていた日本に開国を迫った方法も同様である。この方法は「神の名の下に」殺戮が行われた南米、豪州、ニュージーランドとも大きく異なる点であろうと考えられる。

 モンロー主義にも一言しておきたい。モンロー主義とは約言すれば「我等に構うな。我等も構わない」である。西欧のいざこざに巻き込まれたくないという彼等の思惑であるが、しかし東への進出にはあっさりモンロー主義を放棄して平然としている。まことにご都合主義であるが、今日猶改善を見ない。

 さて、豪州とニュージーランドにも多少触れておきたい。豪州では原住民のアボリジニーは人間ではなく獣に近いとしてスポーツハンティングの対象とされた為、18世紀以前少なくとも50万を数えた人口は20世紀には7万にまで激減している。タスマニア島にはアボリジニーとは別人種のタスマニア人がいたが、彼等に至っては絶滅している。ちなみにタスマニア島はオランダの探検家アベル・タスマンが発見したためにタスマニアと名付けられた。

 ニュージーランドマオリは勇敢な民族で知られているが、植民当初は英国人もずいぶん手こずったようである。しかし狡猾な英国人はマオリが好戦的である点に付け込み彼等が最も興味を示していたマスケット銃を渡した。その時隣の村があなたの村をねらっていますよと付け加えることを忘れなかった。それまで槍や弓で戦い合っていたマオリは近代兵器を手にしたために夥しい死傷者を出した。英国人が運んできたマスケット銃と疫病の為にマオリの人口は激減し、一説には9割の人口を減らしたと言われる。

 流石にやり過ぎであるとの声が英本国でも声は上がったが主流にはなり得なかった。彼等の植民地経営に送り込む人材は謂わば落ちこぼればかりで、植民地に送られた経営者らの関心は、帰還するまでにどれだけ稼ぐかが最大の関心事であった。故に人道的経営など考えの及ばぬところである。海賊行為が国家事業として推奨され、それで以って勃興した国家なだけに、略奪は国家の基本理念であると言い得る。

 19世紀ドイツのヴィルヘルム二世から始まり欧米に流行した黄禍論など根拠のない戯言であるが、白禍は歴史的事実である。しかしこれをもって我等の憎悪を煽りたいのではない。西欧人の精神の裡には陰湿極まりない残虐性と野蛮性を具えた驕慢が今猶在することを言いたいのである。努々忘れてはならない。

理性ある動物たることは誠に好都合なものである。したいと思うことはどんなことにでも理由を見出し或いは作ることができる。
ベンジャミン・フランクリン