王様の耳は驢馬の耳

週一の更新で受け売りを書き散らしております。

「戦争文化論」を読んで その一

理論的に考えれば、戦争は目的を達成する一つの手段である。野蛮ではあるが、ある集団の利益を図ることを意図して、その集団と対立する人々を殺し、傷つけ、あるいは他の手段で無力化する合理的な活動である。

上の一節から始まる「戦争文化論」は歴史学者軍事学者のマーチン・ファン・クレフェルト教授が発表したものである。上記の思想は「戦争は外交の延長である」というクラウゼヴィッツの主張の範疇にあり、戦争は合理的な利益に奉仕するものであるという今日でも一般的な戦争観といえる。しかしクレフェルトは言う。

 だが、この考えは見当違いもはなはだしい。

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「インテリジェンス入門」を読んで その弐

前回はドイツとフランスの情報活動に触れた。今回はイギリスの情報活動に関して少し触れてみたい。情報活動一つとってみても、ずいぶん文化の違いが表れてくるものである。

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インテリジェンス入門

インテリジェンス入門

 

 

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「インテリジェンス入門」を読んで その壱

ご承知だとは思うが、今回扱うインテリジェンスとは知能や知識のことを指すのではなく、諜報活動のことをいう。筆者はあまり技術的なことには関心が薄いのだが、たまたま手にとる機会があったのでここで紹介したい。

 著者である柏原氏は本の冒頭で「情報機関を最初から考えてみたいという人のための導入として執筆」され、扱う時代は現代でなく「近代的な意味での情報機関もしくは情報活動が確立される一八七〇年代前後から一九一〇年前後」までに焦点を絞っている。ではざっと見ていきたい。

インテリジェンス入門

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