王様の耳は驢馬の耳

週一の更新で受け売りを書き散らしております。

2018-02-01から1ヶ月間の記事一覧

「倫理学」を読んで その四

引き続き和辻哲郎の「倫理学」を取り上げていきたい。この本は岩波文庫が出版しているものだが、全四巻にも及ぶ大著であり、和辻の代表作でもあるためしばらくこの本と付き合うことになる。 ちなみにここからは「倫理学」の第二巻になる。哲学書であるため筆…

「倫理学」を読んで その三

社会、世間、世の中などと呼ばれる間柄のなかにおいては孤立的独立的個々人は存在できず、個人は己を捨てることで共同性のうちに埋没することで己を拾うことができるという矛盾を見てきた。ならば間柄を形成する個々人をそうさせる「全体的なるもの」とは何…

「倫理学」を読んで その二

前回は行為する「個人」は人間の全体性の否定としてのみ成立し、人間の全体性は個別性の否定によって成立する人間の二重性を見てきた。さて、近代の個人主義哲学者はこの「個人」の個別的実在性を追求し、人間の共同性を洗い去った先に到達したところを見て…

「倫理学」を読んで その一

和辻哲郎の主著と言えるこの『倫理学』は哲学書であり、前著である『人間の学としての倫理学』を体系的に叙述しようと試みた大著である。和辻自身が認めるように、本著は一見異様に見える。というのも、ありきたりな倫理学書といえば「既成の倫理学の定義や…